中国市場では新型車がほぼ毎日のように投入されるなか、世界販売首位のトヨタが2026年上半期に中国で発売した完全新型車は、広汽トヨタの「bZ7(鉑智7)」1車種にとどまった。
しかし、これは電動化への対応が遅れていることを意味するものではなく、2027年に向けて商品・技術を集中的に投入するための準備期間と位置付けられる。
広汽トヨタは2027年モデルのカムリやレンジエクステンダー(EREV)仕様のハイランダー、一汽トヨタは新型アバロン(Avalon)の投入を予定している。ただし、これらは中国市場向け戦略の序章に過ぎない。トヨタが中国の新エネルギー車市場で本格攻勢に転じるタイミングは2027年とみられている。
2027年には一汽トヨタ、広汽トヨタの双方が電動化戦略を新たな段階へ進める。一汽トヨタでは、新世代パワートレインと全面改良モデル群が、中国市場攻略の中核を担う見通しだ。
一汽トヨタは、次世代プラグインハイブリッドシステム向けとして3種類の新型エンジンを中国で生産する計画を進めている。天津エンジン工場では開発コード「X15NA」の1.5L自然吸気エンジンと1.5Lターボエンジンを生産するほか、天津工場と長春工場ではコード「20xE」の2.0Lプラグインハイブリッド専用エンジンを量産する計画で、いずれも2027年後半の稼働開始が予定されている。
トヨタは2024年、マツダ、スバルと共同で新世代内燃機関および電動化技術を開発する方針を公表し、1.5L、1.5Lターボ、2.0Lターボの新世代4気筒エンジンを開発対象とした。
これらは電動化時代を前提に設計された新型ユニットであり、新しい1.5Lエンジンは従来の3気筒1.5Lを置き換え、1.5Lターボは従来の2.5Lクラスに匹敵する性能を目指す。小型化・低重心化を図りながら出力性能を高めるとともに、欧州のEuro7や中国の国7排ガス規制への対応も視野に入れている。
一方、トヨタは次世代2.0Lプラグインハイブリッドシステムの詳細をまだ公表していない。ただ、第5世代プリウスPHEVに搭載された2.0Lシステムをベースに、次期RAV4向け第6世代PHEVシステムへ進化する可能性がある。炭化ケイ素(SiC)半導体を採用したパワーコントロールユニット(PCU)の搭載や、大容量リチウムイオン電池との組み合わせにより、EV走行距離は150km前後まで伸びるとの見方もある。
全面改良車と新世代PHEV専用エンジンの導入により、一汽トヨタは2027年から本格的なプラグインハイブリッド時代へ移行するとみられる。TNGAをベースとしたトヨタ独自のハイブリッド技術を維持する一方、中国市場で激化する価格競争への対応が課題となる可能性もある。
公開されている入札情報によれば、一汽トヨタは今後3車種の大型モデルチェンジを予定している。成都工場では新型アバロン(開発コード835D)、天津第3工場では新型カローラ(800D)、長春工場では次期クラウン・クルーガーSUV(960D)の生産準備が進められている。
北米市場ではアバロンの販売終了が決定しているが、中国市場では独自モデルとして継続される見込みだ。次期アバロンは従来型レクサスESのプラットフォームをベースに、中国独自の開発要素を盛り込む。
RCE(Regional Chief Engineer)制度のもとで開発される、中国市場専用色の強いモデルとなる見通しで、11月の広州モーターショー前後に初公開される可能性がある。
新型カローラ(800D)は新開発の60PLプラットフォームを採用し、天津第3工場で2027年後半から量産を開始する予定である。公開資料ではフレームレスドア(ピラーレスドア)やPHEV仕様の採用も示唆されており、2025年のジャパンモビリティショーで披露された次世代カローラ・コンセプトとの共通点も指摘されている。
また、環境影響評価資料では、開発コード960Dの新型ミッドサイズSUVが全長4895mm、全幅1951mm、全高1429mmとされ、次期クラウン・クルーガーSUVに相当する可能性が高い。総投資額は約11億元、生産能力は年間15万台を計画し、長春工場でRAV4と混流生産される見込みだ。ハイブリッド車とプラグインハイブリッド車の両仕様が設定される可能性がある。
さらに、中国第一汽車集団(一汽集団)は、自社開発のハイブリッド技術を初めてトヨタへ提供することに成功したと公表している。960Dが一汽・紅旗ブランドのPHEV技術を採用するのか、それともトヨタ独自のTNGAハイブリッド技術を採用するのかは、現時点では明らかになっていない。
一方で、トヨタは新型レクサスESや北米向け次世代ハイランダーEVなどを通じ、1つのプラットフォームでガソリン車、ハイブリッド車、EVを展開する戦略を推進している。各地域の政策や市場ニーズに柔軟に対応できる商品体系を構築する狙いがある。
広汽トヨタは広汽集団との連携を生かし、EVやレンジエクステンダー技術の開発を進めている。bZブランドでは新たなEV投入が予定されるほか、レンジエクステンダー仕様の次期ハイランダーやシエナも今後2年間で市場投入される見通しだ。
PHEVは一汽トヨタ、レンジエクステンダーは広汽トヨタ、EVは双方で展開するという役割分担が進めば、これまでの「兄弟車戦略」は電動化時代に合わせた新たな差別化戦略へ発展する可能性がある。これはトヨタが中国市場を世界戦略の最重要市場の一つとして位置付けていることを示す動きともいえる。
カローラ、RAV4、ランドクルーザー・プラド、カムリ、ハイランダー、シエナ、bZシリーズまで、多様な車種と複数の電動パワートレインを用意することで、世界最大の自動車市場である中国の多様な需要に対応する。その成果は、年間1000万台規模の世界販売を維持するうえでも重要な意味を持つことになりそうだ。
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