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多くの市場関係者はトヨタの中国市場での失速を予想していた。しかし結果は逆だった。中国乗用車市場情報連席会(CPCA)が公表した8月の小売販売台数によると、トヨタは10万7300台を販売し、中国市場で3カ月連続でフォルクスワーゲン(VW)を上回り、第2位となった。

中国のEV市場ではBYD、理想汽車(Li Auto)、AITO(問界)、吉利汽車(Geely)といった中国メーカーに注目が集まる一方、最も警戒すべき存在となりつつあるのがトヨタだ。同社は2026年上半期に大型の新型車をほとんど投入しなかったにもかかわらず、カローラクロス、RAV4、カムリ、そしてbZ3Xによって販売基盤を維持した。

さらに重要なのは、「中国で開発し、中国のサプライチェーンとスマート技術を採用する」という鉑智(BoZhi,bZ)ブランドの戦略が、トヨタの世界EV戦略の新たな起点になり得ることだ。

広汽トヨタのbZ3Xは1〜8月累計販売が5万9744台となり、合弁系新エネルギー車市場で販売首位を維持した。bZ7も中大型EVセダン市場で上位につけている。

こうした実績を受け、市場では「トヨタは北米でレクサス(Lexus)を成功させた経験を、中国で鉑智ブランドとして再現するのではないか」との見方が広がっている。

中国の新興EVメーカーの多くが拡大路線から収益重視へ転換し、伝統メーカーも価格競争によって新車投入を抑制し始めるなか、トヨタはむしろ逆張りの戦略を選んでいる。販売台数と利益率の両立に業界が苦しむ現在こそ、トヨタにとって次の追い上げの機会になる可能性がある。

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トヨタのブランド戦略を振り返ると、フォルクスワーゲンやGMのような多ブランド展開とは異なり、ブランド数を増やすことには慎重だった。唯一の大成功例が1989年に北米で立ち上げたレクサスである。

レクサス誕生の背景には、既存トヨタブランドだけでは高級市場の需要を取り込めなくなったという事情があった。既存ユーザーの買い替え需要を受け止めるため、新たなブランドを創出したのである。

現在の中国市場も状況は似ている。政策、充電インフラ、消費者意識の変化により、新エネルギー車が主流となった。鉑智ブランドは、まさにその電動化時代における新たなブランドの役割を担う存在として位置付けられている。

レクサスの成功は単に高級ブランドを追加したことではなく、「トヨタブランドでは届かなかった市場の上限を引き上げた」ことに本質があった。

世界最大のEV市場であり最大のEV生産拠点でもある中国では、トヨタが世界向けEVブランドを育てる条件が整いつつある。ただし、その方向性は二つある。AITOのような高級ブランドを目指すのか、それともBYDのような大衆EVブランドを目指すのかという選択である。

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鉑智ブランドは広汽トヨタの専用EVブランドとして誕生した。bZ3XとbZ7はいずれも広汽集団とトヨタが共同開発したモデルであり、RCE(Regional Chief Engineer)体制の下、中国市場向けEVの企画・開発プロセスが本格的に現地化された象徴でもある。

bZ3Xは「手頃な価格でもトヨタ品質」が中国市場で受け入れられることを証明した。一方のbZ7は、中国ユーザー向けに高級EVを開発できることを示したモデルと言える。

カムリやカローラ、ハイランダーといった世界戦略車がEV化されたとしても、中国市場で十分な競争力を得られるとは限らない。吉利銀河(Geely Galaxy)、Leapmotor、Zeekr、NIOなど中国ブランドが急速に市場を押さえるなか、トヨタ中国は普及価格帯と高級EV市場の両方で新たなブランド戦略を進める必要に迫られている。

トヨタの強みは依然としてガソリン車市場にある。他メーカーが新車攻勢を続けるなか、トヨタは既存モデルだけで販売順位を維持した。

8月のガソリン車販売ランキングでは、トヨタはカローラクロスとRAV4がそれぞれ1位と4位に入り、フォルクスワーゲンは5車種がトップ10入りした。さらにフロンティアランダー、カムリ、シエナも各セグメントで上位を維持している。

一方、合弁系EV販売ランキングでは、トヨタはbZ3XとbZ3の2車種がランクインした。フォルクスワーゲンは発売直後のID.ERA 5Sのみであり、bZ3X単独の販売台数がVW中国3社のEV販売合計を上回った。

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ハイブリッド車でガソリン市場のシェアを維持し、その基盤を活用してEV市場へ移行する「二正面戦略」が、トヨタの販売を支えている。

中国市場での競争が激化するなか、トヨタは長年培ったハイブリッド技術によってガソリン車ユーザーを維持しつつ、現地パートナーの技術を取り入れてEV転換を進める時間を確保した。

中国は世界最大のEV市場であるだけでなく、世界最大級のEVサプライチェーンを持つ市場でもある。

上海ではレクサスの新EV工場が2027年半ばに稼働する予定だ。しかしBMWやメルセデス・ベンツ、アウディが中国EV市場で苦戦している現状を見ると、高級EVへの転換が容易ではないことも明らかだ。レクサスにとって輸出市場が重要な突破口になる可能性もある。

トヨタはbZ4Xの後、中国市場で鉑智ブランドを立ち上げ、「bZ」というブランドイメージを刷新した。bZ3XとbZ7が合弁EV市場で存在感を示したことは、中国ユーザーから新ブランドが一定の評価を得たことを意味する。

BYDなど中国メーカーが世界市場へ急速に進出するなか、トヨタも競争圧力を強く感じている。日本や北米ではブランド力を維持できても、欧州、東南アジア、中南米では必ずしも優位とは言えない。

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RCE体制の下で鉑智ブランドが中国専用ブランドから世界ブランドへ成長できるかどうかは、トヨタの中国戦略を占う重要なポイントになる。

すでに北米では次期ハイランダーEV、C-HR EV、レクサスES EVが投入され、新型1.5Lエンジンや2.0Lプラグインハイブリッドシステムも準備されている。2027年には新型カローラを含め、既存世界戦略車の電動化が本格化する見通しだ。

中国市場では、一汽トヨタがBYDとの協業によるbZシリーズを展開し、広汽トヨタは鉑智ブランドを軸にEV戦略を進めている。現在の販売実績を見る限り、鉑智ブランドは中国市場で現地化EV戦略が機能することを示した数少ない成功例となっている。

公開入札情報によれば、一汽トヨタは新たな新エネルギープロジェクトを進めており、2027年には協業モデルの見直しが行われる可能性がある。一方、広汽トヨタではレンジエクステンダー仕様のハイランダーやシエナ、鉑智ブランドの新型車が順次投入される予定だ。

トヨタは2027年に5車種を超える新型・全面改良車を投入する計画を進めている。早ければ11月の広州モーターショーで、中国市場向けに現地技術と中国サプライチェーンを取り入れた「新しいトヨタ」の全貌が姿を現すことになりそうだ。